やさしい人

人には言えなかったことを思い出しては書いています

朝ごはん

 

 朝早く目覚めるとジョナサンへ行くことにしている。「今日は行く」そう決めた瞬間から俺の身体はソレを欲し始める。ソレは俺の中では朝食界のラーメン次郎ポジションなのである。ラーメン次郎と比べると失礼に値するかもしれない。。しかし、それに匹敵するくらい、言わば勝負なのである。食うか食われるか、二つに一つ。そんなテンションでジョナサンへと向かう。。

 

 午前6時30分。先客はいた。早起きの老人がコーヒーをすすっている。「俺の勝負を見に来たか」そんな風に思うとさらに身が引き締まる。道中歩いてお腹のコンディションもいい具合だ。

 

「空いてるお席どうぞ」

 

 その声かけで戦場へと案内される。席は禁煙席一択。ソレとの真っ向勝負のためにできるだけ端の席に座る。テーブルには新聞がある。これは読まずにいただいていく。そんなことに気を遣ってられない。メニュー表を見ていると、店員がやってくる。

 

「ご注文お決まりになりましたらボタンでお知らせください」

 

 こう言われたらすぐにカットイン。そして、

 

『シャキシャキキャベツのハムエッグサンドモーニングください』

 

 と敬うように省略することなく発声するのである。ドリンクバーはセットに入っている。飲み物はこの勝負に必要不可欠である。

 

 オーダーを厨房へ伝えにいく店員の後を追うようにしてドリンクバーへ行く。飲み物は決まっている。コーラ、野菜ジュースを一杯ずつ注ぐ。氷は入れない。両手に飲み物を持ったら席にて勝負のときを待つのである。

 

 ソレはなかなか現れない。重厚な装備をしているので出陣に時間を要するのである。前回の勝負のときを思い出しながら、イメージトレーニングをする。この勝負はスピードが命なのである。集中力を高め、感覚を研ぎ澄ませる。

 

「お待たせしました」

 

 ついにソレの登場である。その圧倒的な存在感。よく朝食のカテゴリに入ることができなと思うような迫力。。

 

 俺がソレと呼ぶ、このシャキシャキキャベツのハムエッグサンドモーニングは単なるエッグサンドではない。カリっと焼いたトースト2枚にドレッシングに浸されたような千切りキャベツ、ハム、目玉焼きがサンドされているのだが、その厚みが一般のサンドイッチのそれとは規格外なのである。コールスロードレッシングひたひたのキャベツがぎっしりどころじゃない量詰まっている。「これを挟んだまま形を維持してよく半分に切ったな」と毎回思うのである。

 

 さて、この勝負はスピードが命といったが、それはこのひたひたキャベツのおかげである。あまりの水分量にまわりのトーストが水分を吸収し切れず、サンドを支えられなくなってしまうのである。見た目に驚いてインスタ映えなどと写真を撮っている暇はない。撮っている間にどんどんトーストが水気を帯びてきてしまうのである。

 

 シャキシャキキャベツのハムエッグサンドモーニングをオーダーすると「バーガー紙」が2枚付いてくる。これは攻略アイテムである。まずは、何より先に二切れのサンドをそれぞれバーガー紙に包まなくてはならない。包むときにも注意が必要である。勢いあまって、形が崩れてしまうことがある。急いでも焦らないようにバーガー紙に確実に包むのである。

 

 ここまでが、第一関門。これが済んだら付け合わせのフライドポテトを片付ける。朝なので、揚げたての場合が多いため火傷には気をつける。ここで悠長に食べているとバーガー紙の中のサンドがどんどんふやけていくので、油断は禁物である。フライドポテトを片付けたら、一度リセットのために野菜ジュースを飲む。ここからが本番である。

 

 バーガー紙の様子を見て、サンドをふやけ度合いを確認し、よりふやけているほうを優先する。外側がよく焼いてあり、意外と固いので食べるときには注意する。中身のキャベツこそがこのシャキシャキキャベツのハムエッグサンドモーニングの醍醐味であり、他所では食べられない至極の体験である。キャベツのシャキシャキ具合を堪能しながら、食べ進めるのだが、サンドとしての形態の維持ができるように考えなければならない。トーストだけ、中身だけとバランスを欠いた食べ方をするのはご法度である。卵とハムとの味のバランスも抜群である。

 

 一つを食べ終えるまでに、結構な満足感があるのだが、そこでまだ折り返しにすら到達していないのである。血を分けた相方が控えているのである。それを頭に置きつつ、一切れ目の仕上げに入る。バーガー紙には結構な量のドレッシングが残っている。モスバーガーのソースと同じである。それを一滴残らずいただくのである。いただいたあとのバーガー紙は折りたたんでおく。

 

 さて、二切れ目である。ここまでにどれほどのスピードでいただくことができたかで、二切れ目のふやけ具合が変わってくる。デロデロのトーストにしたくなければ、急がなくてはならない。満腹感が近づくのを感じながら、再び食べ進めていく。ここで感じるべきは感謝である。自然の恵みへの、あるいは人類の営みへのそんな思いを胸にシャキシャキキャベツを楽しむ。コールスローに飽きがきても味は決して変えない。それがジャスティスである。一切れ目と同じくバーガー紙の残り汁はありがたくいただく。二枚目のバーガー紙を折りたたんだときをもって勝負が決したこととする。

 

 勝負の余韻に浸りながらコーラを飲む。程よく炭酸がきいていていつもよりおいしく感じる。シメに紅茶をいただく。よく蒸らして淹れることをおすすめする。お茶をいただいたら、合掌し「ごちそうさま」と唱える。

 

 会計のため、入り口レジにて店員を呼び出す。早朝のホールは一人で回していることが多いのでタイミングを考える。

 

 「701円になります」

 

 ここでもできるだけ釣り銭の出ないようにする。これも礼儀である。終わりよければすべてよしという言葉もあるくらいだ。最後まで気は抜かない。レシートを受け取り、店を出る。次の勝負を期待しながら。。

 

 

 

 

 

 

シャキシャキキャベツのハムエッグサンドモーニング 649円(税抜)

おすすめします。

 

www.skylark.co.jp


 

 

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